今日の精神医学の発展には著しいものがあります。脳科学、分子生物学の革新的な進歩と連動する形で、生物学的精神医学の領域で新たな知が多数提出され,臨床への応用が広がっています。国際的な疾病分類の標準化に伴う診断学上の革新も見逃せません。他方で、現代社会特有の病理や精神病理学・精神分析学・認知心理学の深化を踏まえて多様な精神療法も開発されており、社会精神医学、司法精神医学、児童思春期精神医学などの個別領域でもさまざまな展開がなされています。
弘文堂からはかつてわが国の精神医学界を代表する事典として各方面から確固とした評価を得た『精神医学事典』(初版/増補版/新版)が刊行されましたが、最後の版が絶版の状態となってからすでに十年余が経過し、再版の要望、期待が寄せられていました。こうした要請を受けて新たに編集委員会を立ち上げた我々は、弘文堂の事典の伝統を踏まえつつ、これまでのさまざまな事(辞)典や疾患・障害の分類集、用語集などを精査して取捨選択を重ね、3000余の項目を選定、570名の専門家の協力を得て本事典を完成致しました。
大きな社会変動のなか、医学一般だけでなく、教育、産業の現場、また司法の現場等でも精神医学の知識が必須となっています。本事典では、各方面からのニードにも応えるよう、今日的な項目も多数取り上げております。
現在望みうる最高水準の事典と自負しております。読者の皆様のご支持をお願いする次第です。